マスコミがひた隠しにしていた鯵

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鯵 安値世界一への挑戦

◆９月１７日第７１回扇辰・喬太郎の会(国立演芸場)寿伴『道具屋』（与太郎が中棒をほんとに出してしまう演出は初めて聴いた。短刀の名前を「菊正宗」というのも初耳。誰に教わったんだろう？）/扇辰『秋刀魚火事』/喬太郎『二十四孝』//仲入//喬太郎『すなっくらんどぞめき』/扇辰『山木秀永殺し』★扇辰師匠『山木秀永殺し』ネタ卸。全体にいつもより語り口が早く４０分前後だったのはネタ卸の為か？冒頭は雲助師匠からは聴いた事の無い件ではあるまいか（記憶違いかもしれない）。圓生師匠は演っていたのだろうか？新助の似非田舎者ぶりは圓生師匠に似ていて、若干クサい作り方であり、また一寸線が細いのは最後まで変わらない。池之端を秀永と新助が歩いている場面から始まる。秀永はどちらかというと幇間医者のような雰囲気である。秀永は「信州出身」としいう新助の身元を疑って問質すと、新助は国で祭文語の男にかみさんを間男をされた上に殺されそうになり、名主に「間男をされるのは平生の暮らしぶりが悪いから村を出ていけ」と言われて江戸へ出て来たと語る。秀永は新助に何か思惑があって自分に近付いてきたとは思っているが、新助に「実は医者になりたい」と言わるや、つい信じて、「医術とは病という毒を薬という毒を以て制するもの。万病一毒」と語り、その話のついでのようにして南蛮渡来の毒薬「宗白の輿石」の効き目について語り、そのありかも教えてしまう。「宗白の輿石を「膏薬に使うもの」といいう説明は初耳である。また、秀永の薬部屋で新助が桂枝を勝手に飲んでしまったと語る件もある。秀永は先代の弟子で内儀の婿養子になった男という設定（これは雲助師匠が言っていたかどうか記憶にない）。おすわは如何にも芸者上がりの雰囲気がある。秀永がおすらとの間の赤子の寝姿を見る件があり、ここで初めて新助が「秀永宅の飯炊き」という事が明らかにされる。新助はおすわが「柳橋から出ていた頃を知っている」と言って、当時自分は「川長」（料亭）の板場にいたと言って雄鰐信用させる。新助は秀永に「内儀相手には、木場で鰈の煮付けと白魚の汁で飯を食わせて貰って却って来た」と嘘をつくというが、ここで秀永が「所が木場だけに鰈の煮付けと白魚の汁とは信州出とは思えない言葉だ」と言うが、疑いを深めないのが後に殺される一端となる。お諏訪の妾宅を出て戸を閉めた途端、新助の目付きが変わるが、どちらかといえば「〇〇小僧」といった小悪党の雰囲気なのには違和感を感じた。秀永の内儀も稍堅気っぽくないのは不自然。登場人物全体に演技がクサく感じるのは圓生師匠的だからだろうか？秀永の内儀は後ろから新助に薪ざっぽうで撲殺されるが、これは「薪割」か「鉈」でないと「血潮が辺りに広がる」という雰囲気にならないのでは？「内儀が間男をしている」と新助に騙されて怒る秀永は一寸粘着質の性格を感じさせる。「宗伯の輿石」を新助が秀永に呑ませて殺すが、悶え苦しむ秀永の姿を探るように見て「オイ、どうした！？」と口調を変えて正体を現す新助が、どうしても小芝居じみるのは扇辰師匠の弱味であろうか。秀永と内儀の死体を床下に隠して、新助が秀永の衣装を身に着けておすわのうちに出掛ける件が切れ場なので、彼が「新助市五郎」という「二つ名前」を持つ悪党である、という事が初めて聴いた人には最後まで分からないままにしておくのは疑問である。『秋刀魚火事』前座さんの本来の在り様の話から噺家さんの符丁の話、喬太郎師匠の欧州旅行記念の手拭いが「資金集め」である事の紹介を経て本題へ。吝屋は一家全員、小僧に至るまで吝嗇という設定。長屋連中はみんな口調の抑揚が大き過ぎて、些かギャアギャア聞こえる。「（大家さんは）ひと癖半」の科白は前回聴いた時には無かった。長屋連中の「何ですか？サンマ？」の科白は科白自体に無理があって嘘っぽい。大家が「なるべく太った脂の乗った秋刀魚」という科白も今回が初めて。長屋連中が秋刀魚を焼くのに「今日は（炭を）俵で持って来た」も初耳の科白である。秋刀魚を七輪に一匹ずつ乗せる仕科が丁寧。吝屋が沢庵を切らせる店の者は「文蔵」で「寿司屋に勤めていたから着るのが巧い」というのは楽屋落ち。番頭が楽屋連中がこぞって秋刀魚を焼いているのを見て来て「目黒の秋刀魚茉莉花と思いました」とうーいうのは可笑しいけれど、全体の面白さは正蔵師匠の方が上なのは皮肉である。★喬太郎師匠『すなっくらんどぞめき』「手拭いは欧州公演の資金集め」「柳家喬太郎が初めて海外へ行くんだ！」と叫んだくらい、兎に角、外国へ行くのを嫌がっていたのは割と知られた話。「海外へ行くと必ず日本人は殺される。生きて帰った人はみんな奇跡が起きただけ」という滅茶苦茶に可笑しい話や「テロの多いヨーロッパへ落語を広めに行くなら、島根県へ行く方が大切」「兎に角、資金が足りない（「喬太郎と行くヨーロッパ」といった内容のツアーになっている筈だから資金不足とは思えないが）なんて不安な旅はない」と語り、更に「外国人相手で字幕が出るから言葉は無茶苦茶でも構わない」といって〚芝浜〛をパントマイムで見せたのは凄く可笑しかったし、〚芝浜〛の仕科で科白は〚任侠流山動物園〛にして聞かせたのも抜群に可笑しかった。また、今、映画を舞台化した作品の稽古中で、舞台の稽古場では「〚二十四孝〛という落語を覚えなければならないので芝居の科白が覚えられません」、落語界の主催者には「芝居の稽古が忙しくて〚二十四孝〛が覚えられません」と真逆な言い訳をしている話をして、「〚二十四孝〛で科白を思い出せなかったのは演出です。落語の中の大家さんがスラスラと科白を喋れますか？」という珍無類な言い訳をしたのも可笑しかった、というか、喬太郎師匠ならではである。それから出演する劇団〚ペテカン〛の役者さんたちの話を経て漸く本題へ。先日、目白の明日館で初演した噺だけれども、最初にまず、「西武線は東武東上線を馬鹿にしている」という「鉄道同士」の遣り取りから入った。特に、東武東上線と話している相手が「いや、国分寺線だからですよ」と自嘲したり、「多摩川線」「拝島駅はどうなりました？」「東武伊勢崎線は東武スカイツリー線と名前が変わってから変わってしまいました」という会話が物凄く可笑しく、西武国分寺線が西武新宿線から「東武線なんか同じ鉄道じゃありません。手を洗っていらっしゃい！」と叱られるのには笑った笑った。本題は細部が更に細かくなっていて、池袋マニアの若旦那と話をする定吉がソープランドにも通っていて、具体的な店名まで出すのには笑った。若旦那が二階に作られた「すなっくらんど」に入ると、店の紹介が更に細かくなっているが、要町の四ツ辻のコンビニの話等は少し簡略化されていた。『二十四孝』ネタ卸。序盤、何となくテンションの低い高座ぶりだったように私は感じる。誰もが「鯵を十三匹猫に取られた」というが、これは小鯵なのではあるまいか？一家三人で普通の鯵を十三匹も食うというのは疑問である（「噺の嘘」ではあるけれども）。大家がマジに怒ると八五郎が「オッ、強いの！？」と目を丸くして驚くのは面白い。但し、全体としては目が活きていない雰囲気である。「養老の滝」の故事は抜きで、王昭・孟宗・郭苣・呉猛（ここで大家が一寸言葉に詰まった・笑）の四人の故事が紹介されるだけと短い。大家が「親孝行すればお上に替わって俺が小遣いをやる」と八五郎に言う件もなかった。後半、八五郎がうちに戻ってから噺が面白くなり（但し、友達は出て来ない）、「川魚は生臭いから嫌いだよ」という母親に「そういわずに食べなさいよ」といきなり優しく言いだしたり、〚二十四孝〛を勘違いして「唐土に親をけ飛ばす二十四人が居たんだ」「雪の中から子供が出た」「この子供を埋めちまおうと」「婆ァを裸にして氷の上に腹ん這いに」「池の中から金のかま（正式な字を知らない）が出た」「お前たち、裸になれ」と話が滅茶苦茶になる件は面白く、「母上」や、酒をグイグイ呷り乍ら言う「何で入っちゃうんだろう」の言い方も面白い。「終わりよければ全て良し」とは言わないが、後半の八五郎のしっちゃかめっちゃかさは落語国の人物としてちゃんと成立している。 ◆９月１７日第９９回柳家一琴の会(らくごカフェ)一琴『真田小僧』/一琴『夢八』//仲入//一琴『妾馬』★一琴師匠『妾馬』雲助師匠譲りとの事。黒紋付き。「士農工商」の切り捨て御免に描かれる武士の権力(史実とは違う)に「青菜に肥掛け」の小噺を挟んでマクラへ。「井戸替えの件」カットだから「本来の通し」ではない。八五郎「鵂？」大家「夜の鳥じゃねえんだよ」の遣り取りは可笑しい。正装した八五郎を見た大家の「おお、いいね」の調子は八五郎の姿の出る良い科白。出掛ける前に八五郎の姿を見たオフクロが「泣いて喜びまして」は初耳の科白で酔ってからの伏線になる。八五郎のキャラクターは遊び人でなく職人風。八五郎の「人じゃないの？小鳥？」は可笑しい。門番も若侍も権高で侍らしい。若侍が間違える名前は「亜舎珍五郎天」「柱の太ェ事・欄間の立派な事」という科白は職人の視点が感じられる。三大夫も厳めしい。殿様のキャラクターは温厚。八五郎が緊張でカチカチになって殿様の前で喋る調子は面白い。「膳部を取らせよ」を聞いた八五郎のリアクションは左右を振り向くスラップスティックな感じで可笑しい。八五郎が殿様やお鶴相手に凄むのは些か気になる。笑いから泣きかけても、泣きに堕さないのは結構。士分に取り立てられた八五郎親子はそろって「お小屋」入りする。八五郎が醜男なので岩田杢蔵橘蟹成と名付けられるのは前半の大家の科白と相反する。「長屋に挨拶をして来ないし、夜逃げをしたと思われてるから」と馬乗りで長い刀を引き摺り乍ら長屋へ向かう。長屋仲間から「八公」と声を掛ける件から、次に使者の件に移る。「文箱を届ける役目」で使者に出るという設定は初耳。馬に馬鹿にされ、早朝に大手町を出たのに正午になっても神田小川町という有様。お付きは床几で居眠りを始めてしまい、町の衆が馬の尻を叩いたもので、馬が品川まで走ってしまう。「馬に訊いておくんなさい」と町人の科白に戻ってオチ。『夢八』スマートフォンによる体調管理の話から「人間にとって睡眠が一番」の話、夢と現実の混乱の話。小三治師匠がiPhoneに嵌まっている話。病と夢の関係といった具合に展開して本題へ。八兵衛を呼ぶのは隣町長屋の大家・源兵衛。八兵衛は夢の中で歩き続けて伊勢詣へ行く夢を見ている。源兵衛の「ぶら下ったまま」の科白はネタバレにならないかな？錠前で開ける長屋という設定も珍しい。「美味しそうな匂いがしてますよ」だと科白を置く感じになり、会話としての味わいを減じる気が私はする。左龍師匠ほどではないが、「顔芸」の要素が強いのがマイナスしていると思う。八兵衛が「薄っ気味悪い所」と分かるのは「お馬鹿度」が下がる。「無念の表情物凄くも」を脅かし気味に語るのはひと工夫ありで面白い。風が入って影が揺れる不気味さはちゃんと出ている。白眼を剥いて笑い乍ら首吊り死体は十分に可笑しい。『真田小僧』長男・次男の進路の話から本題へ。金坊の笑顔がわざとらしい。金坊は「イッイッイ」と笑ったりする。金坊が糠味噌に小便をするというと親父が「両方とも塩っ辛いから分からないじゃねえか」というが、自分の体験から言うと糖尿の体液は全て甘くなる（笑）。親父が成田の寄合へ行った留守に按摩が来る設定。親父は単純馬鹿のキャラクターになっている。親父の「言いたくない」は繰り返した方が可笑しさが増すだろう。「主従」は発音が違うのでは？伝承芸能では「しうじう」。「素読みにして何日」の科白はカット。金坊の言い立ては流暢。六連銭の形を縦に表すのは珍しい。旗印なら縦でないと背負い難いから、こちらの方が適切だと思う。